SFM Field Column

ミュージシャン・□□□（クチロロ）
三浦 康嗣さん

劇場、ライブハウス、演芸場などのエンタテインメント施設がひしめく新宿東口に、新宿区民のためのホールとして1979年に開館した新宿区立新宿文化センター。音楽のまち新宿で開催される都市型音楽フェス「SHIN-ONSAI」(@新宿文化センター)の出演アーティストで、新宿在住のミュージシャン三浦康嗣さん（□□□）にお話を伺いました。

新宿とは、高校生の時から縁があるんですよ。親の仕事の都合で小学6年生からニューヨークに住んでいたんですけど、高校受験のタイミングで帰国することになって、高田馬場にあった早稲田実業高校（現在は国分寺市）に進学しました。それから早稲田大学に入って3年の時に中退するまでの6年間は、友だちと遊ぶにしてもデートをするにしても、新宿が多かったですね。

高校3年生ぐらいからレコードを集めるようになって、高田馬場のディスクファン、レコファン、新宿のシスコ、ディスクユニオンに通っていました。昔のソウルやジャズ、ダンスミュージック、ヒップホップ、クラシック、その頃はなんでも聞いていたなぁ。お店の外に置かれたダンボールで1枚10円のレコードが売られていて、そういうのを片っ端から買ったりして。

当時、新宿にあったライブハウス、リキッドルームにもけっこう行きました。700人ぐらい入るけっこう大きなハコなんだけど、あまり行儀がよくない雰囲気で、「勝手に楽しんで」という距離感が心地よかったんですよ（笑）。イギリスのDJ、ロニ・サイズのライブが印象に残っていますね。人力ドラムンベースというダンスミュージックを生み出したアーティストのひとりで、「本当にこんな感じで演奏しているのか！」と驚きました。客席もすごく盛り上がっていたのを覚えています。

2014年には神楽坂に引っ越して、新宿区民になりました。スタジオ兼住居になる物件を探していて、気に入った物件がたまたま神楽坂にあったんだけど、住んでみるとどこにでも出やすくて便利な街ですね。僕はご飯を食べたり、お酒を飲んだりするのが好きで、自宅に友人を迎える時にはよく料理をします。食材の買い出しも含めて、スーパー巡りが趣味なんですよ。昨年末、近所にライフができた時は、朝、昼、晩と時間を変えて3日連続通いましたから。「SHIN-ONSAI」の会場、新宿文化センターの近くにあるマルエツにはお気に入りの商品があって、近くで用事がある時は寄りたくなりますね。

最近、特にそう感じるんですけど、新宿に限らず、大きな都市は人も情報量も多すぎて、人を人と認識するとしんどくなるんですよ。飲みに行ってもマーケティング的ななにかが見えて、「人」を感じない。だから、家族や大切な友人と外食する時は、いつも荒木町に行きます。狭い路地のなかに個人店がひしめき合っていて、働いてる人の個性を感じるお店が多いし、そういう雰囲気を求めるお客さんが集まる町なんですよね。荒木町に通うようになったきっかけは、数年前、ふらりと入った「あたぼう鮨」。お手頃な価格なのにしっかりと江戸前の仕事をしていて、すごく気に入ったんですよ。それでよく足を運ぶようになったら、大将がいろいろなお店を教えてくれました。大将が勧めてくれたスナックは、かつてジャズのライブをやっていたというぐらいに広くて驚きましたね。高齢のママと仲良くなって、そこで3、4回、ライブをしました。そのスナックはもう閉店しちゃったんだけど、いいお店だったなあ。

このスナックライブの時もそうだけど、□□□はメンバーが多くて都内に住んでいない人もいるので、基本的にはコンパクトな編成でライブをするんですよ。僕らが一年に一度、唯一みんなで顔を合わせるのが、「SHIN-ONSAI」。□□□が参加した過去4回のうち、コロナで無観客になった2021年以外は全員集合しています。だから「SHIN-ONSAI」の時は「久しぶり！元気？」みたいな感じで、修学旅行とか同窓会みたいで楽しいですね。僕らの出番が終わった後は、楽屋で打ち上げをしながら、ほかのアーティストのライブをのぞいたりしています。

今年は、いつもライブの構成を担当している村田シゲが参加できない可能性が高くて、久しぶりに僕がひとりで考えることになりそうです。せっかくの機会だから、いつもと少し趣向を変えるかもしれません。それも含めて、楽しみにしていてください！

テキスト：川内イオ　写真：鍵岡龍門